目次

1.巻頭言          2.支部長及び社員選挙結果報告

3.支部大会総会報告*   4.支部大会プログラム

5.支部大会研究発表   6.支部大会 講演

7. 支部大会シンポジウム 8.懇親会  

9. 新入会員・転入会員
--------------------------------------------------------------------
 *「3.支部総会報告」の「資料」をご覧になりたい方は、「3.支部大会総会報告」の中の「もっと読む」をクリックして下さい。

<定例研究会は 2011_25a に記載しています。合わせてご覧下さい>



巻頭言

“My English
髙井 收 (支部長・小樽商科大学)


 2012年3月28日から30日まで米国ペンシルベニア州のフィラデルフィアで開かれましたTESOL Conventionに参加してまいりました。私の目を引いたのは2日目Plenary SessionにおけるUniversity of Tübingen のDr. Kurt Kohnによる「The “My English” Condition: SLA as individual and Social Construction」というタイトルでした。
 日々、外国語である英語を教えていて常に感じることはアメリカ英語であろうが、イギリス英語であろうが、ロール・モデルとしてネーティブの英語を紹介している限り、学習者の方でも基準はネーティブの英語に置かれることになります。現在、国際語としての英語教育が注目されてきて、多様な英語に対しても大変寛容になってきましたが、基準がネーティブの英語である限り、その寛容度は認めるが、「正しい」英語として認識されてはいないのではないかと常に感じております。
 今回のPlenary Speechに出てきた“My English”とは学習者が多様な英語をベースにして「自分自身のバージョンを作る」ことで基準は常に「自分自身の英語 “My English”」にあり、ネーティブの英語はひとつのモデルで基準では無いことをもっと認識すべきあるということでしょう。そのような意味からも、常日頃、多様な英語に触れているというのも大切なことかもしれません。
 私自身、英語を外国語として学び、今、その英語を使って教えている訳ですが、ここ10年余り留学生を受け入れて「異文化コミュニケーション」をテーマとした授業を受けもってきました。様々な母語を背景とした留学生を迎えて英語で授業をしてみると“My English”と言うことが認識されてくるように思います。さて、そのような観点から“My English”を見てみますと、私の英語は「East Asian standard English」と 言うことになるのでしょうか。
 最後になりますが、支部長としてこの2年間をなんとか無事に過ごすことができましたのも、ひとえに副支部長の新井先生を始め、北海道支部の役員の方々および、会員の皆様のご協力の賜物だと感謝しております。2012年の新しい年度が始まりますが、新支部長の河合先生を先頭に、新役員の皆様、これからのJACET北海道支部を魅力ある学会活動とさらなる発展にお導き下さいますようお願いいたします。

支部長選挙及び社員選挙報告

2011年11月25日(金) 午後7時より天使大学において開票しました結果を以下の通りご報 告いたします。

<支部長選挙結果>

1.支部会員数:102 (2011年11月1日現在)
2.有効投票数:  55 (2011年11月21日必着分まで)
3.無効投票数:    0
4.結果:

   河合 靖:  40
   横山吉樹: 14
   白票   : 1

上記の結果により、河合 靖 氏が次期支部長に選出されました。

                                               目時光紀
(支部長・社員選挙管理委員会 委員長)


 <社員選挙結果>

現社員(8名)、補欠社員(2名)ともに信任数が過半数を超え、 全員が信任されました。

新規補欠社員(1名)につきましては、投票により、内藤 永 氏(北海学園大学)が選出されました。


尚、これらの結果につきましては、2011年11月26日(土) に開催されました支部役員会において報告され、 全て承認されました。

総会

JACET北海道支部 平成23年度 
総会議事録

日時:平成23年7月9日(土)13:10~13:30
場所:北海道大学 情報教育館 3 階スタジオ型多目的中講義室

JACET北海道支部会員数(2011年度): 102名
支部大会出席: 28名
委任状:34
司会:中屋晃(北星学園大)
議事に先立ち、75日現在の支部会員が102名であり、総会出席28名、委任状34名、計62名で過半数を超えており、本総会の議決をもって過半数の賛成となることが確認され、総会が成立していることが報告された。

(報告)
1.支部長報告   新井副支部長が高井支部長の代理で全国理事会の報告を行った。
2.幹事報告    研究会発表者募集、支部紀要投稿募集等の告知を行った。
3.各種委員会報告 ニューズレター担当上野研究企画委員より、ニューズレターオンライン化の案内を行った。
4.その他   4-1 2010年度活動・会計報告  配布資料により報告が行われた。
4-2 2011年度 事業計画・予算 配布資料により報告が行われた。
 4-3 2011年度 人事            配布資料により報告が行われた。

(議題)
12012年度 事業計画・予算案
資料により説明が行われ、異議なく了承された。

2. 2012年度 人事案 資料により説明が行われ、異議なく了承された。

3. 支部長・社員選挙及び選挙管理委員会の設置
役員会より選挙管理委員長目時光紀(天使大学)、同委員高井收(小樽商科大学)・水島梨紗(札幌学院大学)・菅原健太(札幌大学非常勤講師)の推薦が行われ、異議なく了承された。
4.  その他
特になし。以下に資料を添付します。

支部総会の資料をご覧になりたい方は、下の「もっと読む」をクリックして下さい。


プログラム


写真

研究発表

1.研究発表:
1) 「 E-learning TOEIC preparation program evaluation: Effects and suggestions 」 
 江口 均(北星学園大学)

(要旨)
  This study aims to examine the effects of an e-learning program for TOEIC preparation published by Asahi Press. Fifty students prepared for the TOEIC using the program and completed a post-program questionnaire.
   The results offer both quantitative data regarding score improvement, and qualitative data concerning students' study behaviors, as well as suggestions for program improvement.

2) 「 The influence of international attitudes, social importance of learning English, and perceived English competence on the possible L2 selves and learning experience 」
 菅原 健太(札幌大学非常勤講師・北海道大学大学院)

要旨)
  Interest in exploring learner motivation using the possible selves approach in tertiary English education has been grown over recent years, since Dornyei (2005) proposed new theoretical framework, “the L2 motivational self system”. This seems to be attributed to the fact that in this globalized era, it has been more important to encourage students to envision English-related possible selves and define individuals' ideal self that may contribute to enhance self-regulation abilities for the acquisitions of professional knowledge and skills. In the theoretical consideration, the author has paid attention to the following belief and attitudinal concepts: social importance of learning English, perceived English competence (concerning the L2 self-confidence), and international posture (Yashima, 2002); these are assumed to have influence on the vividness and clearness of the possible English selves. Concerning the topic of the self-related motivation, general discussion will be presented based on the findings from the following his studies using statistical techniques: 1) the relationships of the aforementioned variables with the components of
the L2 motivational self system; 2) the motivational differences among the student groups according to fields of study.

シンポジウム

シンポジウム 16:05~17:20

テーマ 「これからの文法指導を考える―現実認識から方向設定へ向けて」

趣旨:コミュニケーション能力の発達を目指して英語学習指導要領の改訂が重ねられてきた。高等学校の新指導要領では基本的に英語授業は英語で行うことが規定された。しかし、高等学校では受験指導を主な理由として、「オラコンG」と呼ばれるような、事実上の文法科目が存在するのも事実である。大学教育においても、運用能力の向上を目指した英語カリキュラム改革が各大学で行われてきた一方で、入学者の英語基礎学力の低下が叫ばれ、文法指導に特化した科目を設置する大学が増えている。また、理論言語学研究は外国語教育実践と距離を置く関係が続いてきた観があるが、理論研究による知見を教育に積極的に生かそうという動きも出てきている。本シンポジウムでは、英語教育における文法指導をいくつかの視点から考察し、これからの文法指導の在り方を探る。

司会・講師 河合 靖(北海道大学) 

報告:「大学生アンケートから見る入学前の英語文法学習」
要旨:学習指導要領がコミュニケーション重視になってから、大学入学までに学生がどのような英語教育を受けてきたのか興味があるところである。学生にアンケートを行い、文法をどのような科目・時間に指導されたか調査した。

講師 横山 吉樹(北海道教育大学札幌校)

報告:「英文法はどのように教えるべきか―ELTの教科書から」
要旨:ELT(English Language Teaching)の教科書では,文法を扱う時の大事な観点をいくつか提示している。本発表では,それに関しての説明を行い,そういう点を考慮してどのようなタスクなどを用いて授業を構築することが望まれているのかを説明する。

講師 三ツ木 真実(北星短期大学非常勤・北海道大学大学院)

報告:「認知言語学の知見を取り入れた英文法指導」
要旨:英文法指導の目的のひとつは、学習者に英語をコミュニケーションの道具として使う能力を身につけさせることである。その目的を果たすためのアプローチとして、認知言語学の知見を取り入れた「コミュニケーションのための英文法」指導を行っている。本発表では、その取組みの一部を紹介する。

講演

4)講演: 「大学英文法の構築を目指して」

 岡田 伸夫(JACET副会長・大阪大学)

(要旨)
英語語運用能力を育成するには4技能の基盤である文法力を身につける必要があります。しかし、文法力だけでコミュニケーションできるわけではありません。そのことを踏まえると、近年の中高の授業でコミュニケーション活動が中心になってきていることは間違いではないと思います。しかし、コミュニケーション能力の育成を目指す一方で、コミュニケーションを下支えする文法力に対する認識が希薄になったために、確かな文法力を身につけるに至っていないという現実は皮肉としか言いようがありません。
大学の英語の授業で学生が確かな文法力を身につけて大学に入ってきていることを前提にして授業をし始めると、とたんに立ち往生してしまいます。さほど文法能力がなくてもできる表面的なコミュニケーション活動にシフトするか、慌てて高校英文法を復習することになります。しかし、ひとたび大学レベルにふさわしい知的内容のコミュニケーション活動につなげようとすると、やはり高校英文法より一段上の大学英文法が必要になりますし、大学英語教育の最初から最後まで高校のremedial grammarを教えるわけにもいきません。大学生に一段上の大学英文法を教えなければならないことは当然のことです。
そうは言っても、拠り所とすべき大学英文法はどこにあるのでしょうか。高校でも大学でも、高校英文法が英文法双六の上り、言い換えると、高校英文法が学ぶべき英文法のすべてであるかのような受け取り方がなされているのが現実ではないでしょうか。大学英語教育が、高校レベルの学習英文法の内容とその指導法に全面的に依拠すると、結局は、大学生に大学英文法を提供することができないばかりでなく、現行の高校英文法の「意味」のない、形式中心の文法を教条的に指導するだけになってしまい、大学生にふさわしい英語力を開発することにはつながらないだろうと思います。
このジレンマを克服するには、中高の英語の授業で、中高にふさわしい文法内容を適切な方法で教えることと、近年の科学的英文法研究の成果を大学英文法に取り入れ、大学英文法を豊かにし、それを適切な方法で教えることが不可欠です。
ここで注意しておかなければならないことがあります。科学的英文法研究は、必ずしも学生の英語コミュニケーション能力の育成を直接の目的にしているわけではありません。また、科学的英文法研究の内容は、抽象度が高かったり、逆に、重箱の隅を突く些細なものであったり、必ずしも実際の英語使用の役に立つわけではありません。私たちがしなければならないことは、多様な英文法研究に目配りし、その中から目の前の自分の学生に必要な知識を拾い出し、それを学生が消化しやすい形に加工して提供することです。このような認識を持った大学英語教員が増えてくれば、大学英文法教育の質は確実に向上するでしょう。また、このような認識を共有する大学英語教員が協力し合って大学英文法の構築に向かえば、必ず大学英語教育が質的に改善されてくるはずです。

懇親会

場所: 春夏秋灯 (北3西3 大同生命ビル)
会費: 5,000円